精神障がい者雇用の現状と課題
精神障がい者雇用の現状と課題
精神障がい(統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかんなど)のある方の雇用は、近年、障がい者雇用の中で最も伸び率が高い分野です。
2018年に精神障がい者が法定雇用率の算定対象に加わって以降、企業の採用意欲は急速に高まりましたが、定着には特有の難しさも存在します。
1. 雇用の現状:採用数の急増 2026年現在、精神障がい者の新規求職者数および就職件数は、身体・知的障がいを上回り、全障がい区分の半数近くを占めるようになっています。
算定ルールの変更: 2024年4月から、週10時間以上20時間未満の「短時間労働」も雇用率に算定できるようになりました。これにより、長時間の勤務が難しい精神障がいのある方が、スモールステップで働き始める機会が大きく広がっています。
企業の意識変化: かつては「精神障がいは体調が不安定で雇用が難しい」という偏見もありましたが、ITスキルや事務処理能力が高い層も多いため、貴重な戦力として期待を寄せる企業が増えています。
2. 特有の課題:見えない障がいと「波」 精神障がい雇用において、最も大きな壁となるのが**「症状の変動(波)」と「外見からは分かりにくいこと」**です。
体調の変動: 日によって、あるいは時間帯によって体調やメンタル面が大きく変動することがあります。昨日は元気に働けても、今日は起き上がれないといった「波」への理解が現場に求められます。
コミュニケーションの摩擦: 疲れやすさや対人不安、集中力の持続の難しさなどが、周囲には「やる気がない」「自分勝手だ」と誤解されてしまうケースが少なくありません。
定着率の低さ: 身体・知的障がいと比較して、精神障がい者の就職1年後の定着率は依然として低い傾向にあります。職場環境への不適応や、無理をして働きすぎてしまう「過適応」による再発が主な要因です。
3. 現場で求められる合理的配慮 長く働き続けるためには、画一的なルールではなく、個別の特性に応じた柔軟な体制が不可欠です。
柔軟な勤務体制: 時差出勤、短時間勤務、テレワークの活用、定期的な通院・休憩の確保など、体調に合わせた働き方の調整が必要です。
業務の見える化: 曖昧な指示は不安を煽ります。マニュアルの整備や、指示を口頭だけでなくチャットや書面で残すといった「情報の明確化」が有効です。
相談窓口の確立: 現場の上司以外に、産業医やジョブコーチ、支援機関の担当者など、本人が「弱音を吐ける場所」を確保しておくことが定着の鍵となります。
4. 2026年のトレンド:メンタルヘルス経営との融合 現在、企業には「障がい者雇用」だけでなく、全社員の「メンタルヘルス対策」が強く求められています。
精神障がいのある方が働きやすい環境(心理的安全性の高い職場)を整えることは、結果として障がいのない社員の離職防止や生産性向上にもつながるという**「インクルーシブ・リーダーシップ」**の考え方が主流になりつつあります。
まとめ
精神障がい雇用は、「数」を追う段階から、いかに「安定して自分らしく働き続けられるか」という「質」の段階へ移行しています。
本人の自己管理(セルフケア)と、企業の環境調整(合理的配慮)が両輪となって機能することで、真の戦力化が実現します。

