就労継続支援B型は、いま大きな転換点にあります
「B型って、軽作業をするところでしょ?」
そう思われることがあります。
もちろん、内職、清掃、食品づくり、農作業、ハンドメイド、パソコン作業など、実際に“仕事”をする場であることは間違いありません。
でも、就労継続支援B型の本当の役割は、それだけではありません。
体調や障がい特性に合わせて、自分のペースで通い、少しずつ生活リズムを整え、人と関わり、社会とのつながりを取り戻していく場所。
それが、B型の大切な意味です。
近年は、全国的にB型事業所が増え、工賃向上への関心も高まっています。厚生労働省の公表では、令和6年度の就労継続支援B型の平均工賃月額は24,141円で、令和5年度の22,649円から上昇しています。
これは喜ばしい変化です。
ただし、工賃が上がればそれで良い、という単純な話ではありません。
B型は「雇用契約を結ばない働き方」
就労継続支援B型は、一般企業で働くことや、雇用契約を結んで働くA型がすぐには難しい方が利用できる福祉サービスです。
大きな特徴は、雇用契約を結ばないこと。
つまり、毎日決まった時間に必ず働かなければならない、という形ではなく、本人の体調、障がい特性、生活状況に合わせて利用しやすい仕組みです。
たとえば、
・朝が苦手で午後からなら通える
・週1回から少しずつ始めたい
・人混みや音に疲れやすい
・体調に波があり、休みながら働きたい
・一般就労の前に自信をつけたい
こうした方にとって、B型は「働く練習の場」であり、「生活を整える場」であり、「安心して失敗できる場」でもあります。
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定では、B型について平均工賃月額に応じた報酬体系の見直しなどが行われ、工賃向上をより意識した制度設計になっています。
一方で、制度が工賃を重視するほど、現場では大切な問いが生まれます。
「高い工賃を目指すこと」と、
「その人らしいペースを守ること」は、どう両立できるのか。
B型の価値は、数字だけでは測れない
たしかに、工賃は大切です。
利用者さんにとって、自分で働いて得たお金は大きな意味を持ちます。
好きなものを買う。家族にプレゼントする。昼食代を自分で払う。少し貯金する。
金額の大小に関係なく、「自分にもできた」という実感は、心の土台になります。
しかし、B型の成果は工賃だけではありません。
昨日まで家から出られなかった人が、週1回通えるようになった。
人と話すのが苦手だった人が、職員に「おはよう」と言えた。
作業中に疲れた時、自分から「休憩したい」と伝えられた。
失敗しても、次の日また来ることができた。
これらは、数字には表れにくいけれど、人生にとって非常に大きな前進です。
支援者の側も、ここを見失ってはいけません。
「もっと早く作業して」
「もっと通所日数を増やして」
「もっと工賃を上げよう」
その声かけが、本人の力を引き出すこともあります。
でも、時にはプレッシャーになり、通えなくなるきっかけになることもあります。
大切なのは、本人の“今の力”を丁寧に見ることです。
できないことを責めるのではなく、できていることを見つける。
休むことを甘えと決めつけず、回復の時間として捉える。
作業の成果だけでなく、通所できたこと、相談できたこと、気持ちを言葉にできたことを評価する。
B型は、単なる作業場ではありません。
その人が「自分は社会の中にいていい」と感じ直すための場所です。
これからのB型に求められること
これからの就労継続支援B型には、二つの役割がより強く求められると思います。
一つは、工賃向上に本気で取り組むことです。
利用者さんの力を安く見積もらず、地域の企業や農家、商店、行政と連携し、価値ある仕事をつくる。
「福祉だからこの程度」ではなく、「この人たちだからできる仕事」を広げていくことが必要です。
もう一つは、安心できる居場所であり続けることです。
すべての人が一般就労を目指すわけではありません。
すぐに長時間働けるわけでもありません。
病気や障がいと付き合いながら、ゆっくり社会参加を続ける人もいます。
その歩みを支えることも、B型の大切な役割です。
利用者さんやご家族に伝えたいのは、B型を選ぶことは「後ろ向き」ではないということです。
自分のペースを知る。
得意なことを見つける。
人との関わりを少しずつ増やす。
働く喜びを感じる。
その一歩一歩は、確かに未来につながっています。
これからB型を選ぶ方も、すでに通っている方も、どうか比べすぎないでください。
大切なのは、昨日の誰かより優れていることではありません。
昨日の自分より、ほんの少し安心して過ごせること。
就労継続支援B型は、働くことを通して、その人らしい人生を取り戻していく場所です。
そしてこれからのB型は、「工賃」と「居場所」の両方を大切にできる事業所こそが、本当に選ばれていく時代になるはずです。

